損傷時復原性計算書(DAMAGE CALCULATION FOR B-60

船舶海洋工学シリーズ@:船舶算法と復原性より

5.3 損傷時確率論的復原性基準とは

 衝突や座礁を原因として、船体のどこかに穴があき、船内への浸水が起きたとする。このとき、船体は喫水、リム角、横傾斜角を変化させながら最終的な状態に達する。この最終状態に おいて、沈没、転覆せず、さらにある程度の外力が働いても転覆に至らないことを保証するのが、損傷時船舶復原性基準である。この基準は1912年のタイタニック号の海難事故を契機に国際規則として作られた。
 損傷時に船舶が沈没・転覆しないことを保証する方法の
1つとして、ある区画が浸水したときに沈没もしくは転覆しないことが要求される。このように、区画を設定して、そのときの安全性を確保する方法がまず考えられ、決定論的方法と呼ばれた。その後、もう1つの方法として、あらゆる(考えられるすべての) 浸水状態を対象にその浸水が発生する可能性を確率で表し、またこの考えられるすべての浸水状態それぞれについて浸水状態が転覆・沈没しない安全性を確率で表し、これら2つの確率の積を足し合わせて評価する方法が提案された。これを確率論的手法という。現在は、客船および乾貨物船には確率論的手法が、タンカーなどには決定論的手法が適用されている。ここでは、後者の確率論的手法を理解するために、浸水最終状態およびその状態での残存復原性を知るために必要となる復原力曲線、確率論的手法の考え方、その具体例としての国際基準について説明する。
 なお、現在船舶を設計する際には、損傷時復原性は船種によって異なるいくつか規則で規定さ れている。そのため、船舶設計者は設計している船舶にどの規則を適用するのかを適切に選択しなければならない。付録
5.7に船種ごとの損傷時復原性規則の適用について整理しているので参考にしていただきたい。

【付録 5.7】 適用するべき損傷時復原性規則について
 SOLAS 条約の中の規則以外にも損傷時復原性を規程する規則があり、船舶設計者は設計している船舶にどの規則を適用するのかを適切に選択しなければならない。表5.5に船種ごとの損傷時復原性規則適用対照表を示す。なお、船舶型式のAはタンカー、Bはタンカー以外の貨物船、客船を示している。
 
B-60 は、International Convention on Load Lines 1966 (ICLL 1966)の第27規則に従って1つまたは複数の区画の浸水計算を行い、乾舷を減じたB型船舶(A型とB型船舶の表定乾舷の差の60%までを差し引いた乾舷を有する船舶)で、B-100は、同様に、ICLL 1966 の第27規則に従って横置隔壁に隣接する前後の2区画が同時に浸水すると仮定した浸水計算を行い、乾舷を減じたB型船舶(A型船舶の表定乾舷まで乾舷を減じた船舶)である。
 
B+は、第一位置に銅製以外のポンツーンハッチカバーを有し、ターポリンなどで風雨密を確保する船舶で、その風雨密性が、ガスケット付き銅製ハッチカバーに較べ劣ると考えられることから、B型船舶の表定乾舷を増加したB型船舶である。
 表
5.5のうち、ICLL 1696 Reg.27MARPOL条約、IBCコード、およびIGCコードによる損傷時復原性 の概要(特別な免除規定などを除く)を、それぞれ、表5.6、表5.7、表5.8、表5.9に示す。







因みに当方の計算書の目次のみ添付(物量が多い為)