一般的な船の種類

船の種類(kind of ship)

海 軍(Navy)
海軍は軍艦(War ship)と軍用船(Auxiliary ship)で成り立つ。
海軍華やかな時代には戦闘艦(Battle ship),巡洋艦(Cruiser),
駆逐艦(Destroyer),潜水艦(Submarine boat),その母艦(Depot boat),
掃海艇(Marine sweeper),砲艦(Gun boat),水雷艇(Torpedo boat) など
と,堂々たる威容を誇示したものであるが,戦後は様相一変,これら戦闘艦な
どの影は薄く,大型艦としては航空母艦が残っている位で,今は水中から弾道
弾発射ができる原子力潜水艦(Nuclear submarine boat)などが,主として
建造されているようである。
公用船(Public service boat):公用船では気象観測船(Weather boat),
測量船(Survey boat),警察用の巡邏船(Scout boat),巡視艇(Patrol
boat)などがある。


商 船(Merchant vessel)

商船とは利益を得るために動かす船を総称するもので,
これを積載する物で区別すると,客船,貨物船,特殊船などがある。

(a)客 船(Passenger boat)

客船は戦前花形船として8万トンのQueenMary や Normandy などの
大型豪華客船が,30ノット(Knot)の高速力で大西洋を走っていたが,
戦後は航空機の発達におされ,影が薄れているけれども,
まったく無くなったわけではなく,大西洋を息抜き的に旅行する豪華客船や,
急がぬ旅,例えば観光船(Excursion boat)とか,家族づれの引越し客などに
愛用され,比較的安上がりに旅行ができる単級船(Single class boat)
(1等,2等の区別のない船)などが計画されている。

(b)貨物船(Cargo boat)

商船隊(Mercantile fleet)のおそらく8,9割は貨物船である。
貨物船は経済第一であるから,居住設備(Accommodation)
などはできるだけ簡素化し,船倉(Hold)を広くとり,荷役設備(Cargo gear)
に重きをおくものである。また特殊貨物のために特殊構造の船が発達し,つ
いに20万トンのタンカー(Oil tanker)や鉱石船(Ore carrier)などもで
きている。普通の貨物船(General cargo ship)としては市場や集貨の関係
で,それほどの大型船は少なく,戦後大型化したといっても2万トン位が最大
のようである。貨物船の速力は戦争直前日本が17ノットの優秀貨物船を走ら
せたのが世界の注目するところとなり,戦後はだいたい17ノットが普通であ
ったが,最近は20ノットを越す高速貨物船もでき,だんだん速くなる傾向であ
る。

(c) 貨客船(Mixed boat)

これは上記2種類を混用したもので,船倉の大部分は貨物を積載し,
水線以上の甲板間や,上甲板上に増設した船楼に,船室または
接客設備を設けて客船を積載するものである。純客船では設備万端に費用
がかさみ,速力も贈さねばならず,それに旅客には時季があっていつも満員と
いうわけにはいかず,相当の運賃を取っても,貨物船のように確実に利益を上
げることが難しいから,貨客船が生まれたのである。したがって,ある船では
客を副業的に,他の場合では貨物を副業的にという風に,その割合はまちまち
である。一般にみて客を副業にするのが多く,純客船というものは案外少な
い。
 日本では瀬戸内とか離島間の小客船のほかに,純客船はほとんど見かけら
れない。ただし法規上では,旅客定員が13人以上ならばすべて客船として取
り扱われるから,統計上では相当の旅客船が計上されるが,実質的には貨物船
であることが多い。

(d)特殊船(Special boat)

経済思想が高揚すると特殊船が進出してくる。
その先駆をなしたものがタンカー(Oil tanker)である。油は生産地が
工業地帯から遠く離れた所に偏在し,船倉に直接に積み込んでバラ積輸送(
Stowed in bulk)することが必要である。この種のタンカーは戦前からも相
当量あったが,戦後,油の産出や需用が急激に増加し,ことに米国の油資源が
国内で不足し,国外から輸入するようになってから米国のタンカーが特に急
増した。船型についてみると,戦前はだいたい1万トン前後だったのが,戦後
は2万トンになり,3万トンになり,そのうちにスーパータンカー(Super
tanker)4万5千トンとなったかと思ううちにマンモス タンカー(Mammoth
tanker)6万8千トンとなり,最近は30万トンの Super Mammoth tanker,King
size tanker が出来上がった。これは商船の経済本位という点から考えると
当然の成り行きであろう。すなわち工業が発達するにつれて人件費が高くな
り,入手を減らすことが考えられる。例えば1万トンの船員を30人とすれば,
2万トンで40人,4万5千トンで50人,6万8千トンで55人,10万トンで60人という
風に,トン当りの人手は非常に節約できる。
 問題は接岸設備であるが,工業規模が大きくなれば,相当の接岸設備をつく
っても,収支償う計算が成り立ちうるし,やむをえない場合には,本船は5~
6km 沖につなぎ,岸との間は輸送パイプで連絡することもできる。今一つの
利点は,油が積込み港に集積され,輸送航路が一定し,積却しが特定港に集約
されるから,集貨や積却しに特別の考慮が払われないということもあって,油
タンカーは大型化する一方である。

(e) 石炭船(Collier)

戦後,石油工業の勃興に反比例して,石炭工業は斜陽化してきた。
戦前は相当数の石炭専用船が造られていたが,戦後石炭は古船唯一の
市場となり,石炭船の新造はほとんど影をひそめていたが,古船輸送で
は非能率かつ不経済なため,最近特殊の構造と荷役設備をもつ高性能の石炭
専用船が新造されている。

(f) 鉱石船(Ore carrier)

 重工業の基幹産業である製鉄業も戦後急激な膨張をきたしたが,
従来の鉱石運搬といえば古船の独壇場で,鉱石船の集まる八幡港は
世界的古船展覧会場の観があった。鉱石も石油と同様工業地帯から離れた
地方に産出されるから船で輸送せねばならない。戦前米国の鉱石はだい
たい国内産で賄われ,鉄道によるか大湖の湖水船(Lake boat)で運搬された
が,戦後は国内産では賄い切れず,外国から運ばねばならぬことになり,鉱石
専用の航洋船か゜急ピッチで造り出された。日本でも同様,量の増加と輸送
路が遠くなったため,古船だけに任せて置けなくなり,鉱石専用の航洋船(
Ocean going carrier)が急ピッチで造り出された。この方もタンカーと同
様経済的見地から大型化する一方で,既に8万トン,10万トンという巨船が造
られている。往航には石油を積み,帰船には鉱石を石油倉に積む船もできて
いる。しかし,この方は油と違い荷役が面倒で,沖繋りの荷役はできず,特殊
な接岸設備が必要である。
 上記の通り石油船や鉱石船はとめどもなく大型化するのに,貨物船はせい
ぜい2万トン位に止まるのは積荷の性質によるものである。明治末期に
"Dacota""Tacoma"という4万トン貨物船が日米間を航海していたが,経営不振
のためにつぶれてしまった。当時の話を聞くと,この船が入港すると,代理店
(Agent)が一生懸命集めた貨物を一ぺんにさらってしまい,それでも満船で
きず,船はいつも半荷状態で航海したため,ついに経営できなかったそうであ
る。普通の貨物船(General cargo vessel)は荷役港が散在し,数量も分散
しているから,一概に大型化するのは困難なためであろう。


その他の特殊船

糖蜜(Molasses),硫酸(Sulphuric acid),セメント
(Cement),食塩(Salt),クレオソート(Creosote)などもザラ荷(Bulk
stowage)で輸送され,特殊の構造となっているが,だいたいはタンカーに類
するものである。冷蔵貨物は冷蔵船(Refrigerated cargo vessel)で輸送
される。その他液体ガス輸送船(Liquid petroleum gas carrier,L.P.G.),
砕氷船(Ice breaker),貨車航送船(Truck ferry または Train ferry),
捕鯨船(Whale boat),キャッチャー(Catcher),漁船(Fishing boat)など
の特殊船があるが,それらについては後章で詳説する。


航路や用途による船の名称

 海峡を連絡する船は連絡船(Channel steamer),客車や貨車をそのまま積
み込むものを列車連絡船(Train ferry boat),トラックやバスを運ぶ航送
船(Truck ferry boat),客だけ運ぶ渡船(Ferry boat),沿岸航路や平水航
路だけを航行する船(Coaster),湖水船(Lake boat),川船(River boat),
吃水の特に浅い船(Shallow draft boat),トロール船(Trawler),刺網船
(Drifter),捕鯨船(Whaler),もりを撃って鯨を捕える捕鯨艇(Catcher
boat),母船(Foctory boat),救難船(Salvage boat),浚渫船(Dredger),
ポンプ浚渫船(Pump or Suction dredger),電線敷設船(Cable ship),ひ
き船(Tug boat or tow boat),艀(Lighter or barge),小型蒸気船(
Launch),快遊帆船(Yacht),快遊汽船(Steam yacht),水先船(Pilot
boat),検疫船(Quarantine boat),巡視船(Patrol boat),税関監視船
(Custom patrol),水運船(Water boat; Water tender),おわい船(Soil
barge)など。


定期船(Liner)

 郵便物を積んだ船は郵便船(Mail ship),定期船は多
くの場合郵便物を積むから,定期船を単に Mail ということもある。これに
対し不定期船を Tramper という。


推進方法による船の名称

 帆によるものを Sailing ship または Sailer,このうちで帆の張り方で
Cutter,Lugger,Schooner,Brig,Brigantine,Barque などの各種がある。帆船
で補助機械を持った船を機帆船(Sailing vessel having auxiliary engine)
という。ただし最近は帆は持たなくても機帆船ということがある。螺旋推進
器機で動かしても,法的には汽船という)。翼車によるものは Paddle steamer,
プロペラ Propeller 1つの船は Single screw steamer, 2つのときは Twin
screw steamer; T.S.,3つのときは Triple screw steamer, 4つのときは
Quadruple steamer,ディーゼルならば Diesel boat または Motor boat(こ
れはディーゼル以外の機械,例えば Gasoline engine, Hotbulb engine など
を含む,広い意味で内燃機船 Internal combustion enging boat ということ
もある),原子力によるものは Nuclear vessel である。
 船名の頭に S.S. とつけたもの(例えば S.S."Toa Maru")は Screw
steamer またはまれに Steel ship を意味し, Steam engine または Steam
turbine engine を持つ船を含む。M.S.をつけたもの(例えば M.S."Osaka
Maru")は Motor ship を意味し,Diesel engine, Gasoline engine, Hot
bulb engine. Electric motor を持つものを含む。