法規 (日本) による船の種類ならびに用語の説明

法規 (日本) による船の種類ならびに用語の説明

構造による船の種類
ここで甲板というのは船の全長にわたり連続した甲板を意味する。
甲板一層を有する船
(a) 重構船
(b) 軽構船
甲板二層以上を有する船 
(a) 重構船
(b) 軽構船
(c) 全通船楼船
(d) 波よけ甲板船
 (a) 重構船 (Full scantling vessel) 重構船とは標準強力 (Standard strength) の船で,船の型 (Form) の許す限り一ぱいの満載吃水を与えられる船をいい,各部の構造寸法が鋼船構造規程,またはこれ以上の強力な寸法構造を持つ船で,各種船級協会の標準強力船も,もちろんこのうちに含まれる。
 (b) 軽構船 (Light scantling vessel) 軽構船とは重構船より軽い寸法構造を持つ船で,満載吃水は船の型で制限されると同時に,強さ(Strength)でも制限される船をいう。この種の船は客船とか,貨客混用船で,一定の貨物航路を持っており,その貨物が雑貨のように,軽量でかさばる貨物を積む船,すなわちあまり吃水に重きをおかない船に採用される。
 (c) 全通船楼船 (Complete superstructure vessel) 全通船楼船とは重構船の上甲板上になお一層の全通いた船楼甲板 (Superstructure deck) を重ねたもので,満載吃水は第二甲板を基準として計算する日よけ甲板船,波よけ甲板船等をいう。
 (d) 波よけ甲板船 (Shelter deck vessel) 波よけ甲板船とはトン数開(Tonnage opening) を持つ波よけ甲板船,またはトン数開口を持たない波よけ甲板船で (これはまれにあるが,実質的には覆甲板船に極似する),この種の船は第二甲板を基準として満載吃水線を算定する。
船舶安全法による船の種類
 (a) 旅客船 (Passenger boat) 13人以上の旅客定員を持つ船をいう。
 (b) 非旅客船 (Non-passenger boat) 12人以下の旅客定員を持つ船,または旅客定員を持たない船をいう。すなわち普通の貨物船やタンカーなどはすべてこの種類に属する。貨物船でも12人以下ならば旅客定員を持つことが認められる。
1. 漁船 (Fishing boat) 漁業に従事する船,漁獲物の保蔵または加工設備を有する工船 (Factory boat), 漁獲物または加工品を運搬する船,漁業の試験, 調査, 指導, 練習などに従事する船などを総称する。船の長さ70m以上の工船は特種漁船と称せられる。
(d) 移民船 (Immigrant ship) 移民または三等旅客50人以上,または両者を合わせて50人以上を積んで,近海区域外の港または特定の地方に航海する船 (昔のサンフランシスコ航路の船なども含まれていた) をいう。
 旅客定員とは,客室の面積ならびに容積を航行区域により,一,二,三等の別により,客室が上甲板以上にあるか,上甲板の直下にあるか,第二甲板より下方にあるかなどによって,設備規定により割り出された定数である。ただ船主 (Owner),管理人 (Manager),用船者 (Charterer),その他船内で事務をとる人,例えば郵便官吏 (Post officer),医者 (Doctor),理髪人 (Barber),銀行員 (Bank man) などで,客室以外に特定室を持った者は旅客とはみなさず,したがって旅客定員には含まれない。
臨時旅客とは漁夫, 木材積取人, 殖民地への移住民, 季節的出稼ぎ人などの,近海区域または特定区域へ行く者,または見学団,慰安旅行団などで,沿海区域を航海する者をいう。これらの定員は上記旅客定員よりはるかに多くの定員が認められ,その設備等も相当簡易化される。
甲板旅客 (Deck passenger) とは近海または遠洋の航行区域を持つ船が,特定された区域 (主として南洋, 印度洋, 支那海など) で暴露甲板 (Weather deck) 上に積む旅客をいい,設備としては暴露甲板上にテントを張り,荒天の際逃げ込む場所としては船内の通路等を利用するなど,ごく簡単な設備だけで,主として支那人,南洋人などの出稼ぎや,巡礼旅行者などに利用される。
最大搭載人員とは旅客 (すべての種類),船員,その他の乗組員 (船主, 用船者,医者など),すなわち船上にあるいっさいの人員総数をいう。
汽船と帆船の別 (Steamer and sailor) : 両者の区別ははっきりしているようであるが,近来帆だけで走る船はほとんど皆無で,たいていの帆船は補助機関を持っている。すなわち機帆船といわれる船で,かえって帆を持たない船が多い。しかし検査法規では汽船と帆船とははっきり区別してあり,帆船の検査は汽船に比べ非常に簡易化されている。そこで検査法の適用にあたっては,主に船の用途によって区別される。すなわち引船とか客船などでは,帆があっても汽船として取り扱い,貨物だけを運ぶものは,帆がなくても帆船として取り扱われる。
船の資格
船の資格には第一級から第四級まであり,汽船と帆船で区別される。
                   (この規定は外国には無いようである)

資  格 船   種 長 さ (m) 最大速力(1時間につき)
第一級船 汽船
帆船
60 以上
25 以上
10海里以上
  -
第二級船 汽船
帆船
30 以上
20 以上
8海里以上
  -
第三級船 汽船
帆船
1. 以上
無制限
6海里以上
  -
第四級船 汽船
帆船
無制限
無制限
無制限
  -

船舶安全法による航行区域 (Playing area)
( a ) 遠洋区域 (Ocean going area) は区域に制限なく,第一級船のみに許される。
( b ) 近海区域 (Greater coasting area) は第二級船以上に許され、第一区、第二区、第三区に区分けされる。
第一区 東は東経175゜、西は東経113゜、南は北緯21゜、北は北緯63゜
第二区 東は東経130゜、西は東経102゜、南は北緯4゜、北は北緯27゜
第一区 東は東経175゜、西は東経94゜、南は北緯11゜、北は北緯21゜
以上の区分は主として船員法運用に関するもので、安全法運用には直接関係ない。
( c ) 沿海区域 (Coasting area) は第三級船以上の船に許される航行区域で、だいたい本州または島々の沿岸から20海里以内の区域であるが、地方によっては特別な区域が指定されることもある。
( d ) 平水区域 (Still water area) はすべての船に許される区域で、湖、川、港内はもちらん、港内でも一部を限って許される区域がある。
 漁船の航行制限 (fishing area) 漁船は魚を追って航行するから、級別で制限することは不可能であり、ふつうでいう航路制限は無いけれども、漁船特殊規定では第一種、第二種、第三種漁船及び特殊漁船と、漁業の種類にとって規定した一定の航路が決まっている。
船の規格による船体構造寸法の差別 第一級船と第二級船との間にはほとんと差別はない。第三級船以下になると、材料試験の省略その他、担当の簡易化が考慮されている。
 国際航海 (International voyage) 国際航海とは、国際間の航海をいうもので、国とは独立した国の本土だけを意味し、植民地、海外領土、保護領、委任統治下の地域などは、各別個の国とみなされる。
 短国際航海は海岸から200海里をこえない航海、長国際航海は海岸から200海里を越える航海をいう。すなわち対岸までの距離が400海里以内ならば短国際航海で、それ以上ならば長国際航海である。従って日本海の広い所を横切れば長国際航海となり、沿岸づたいに行けば短国際航海となるのである。
 この長、短の国際航海に関する規定は主として旅客船の安全設備に関連するもので、普通の貨物船には格段の関係はないものである。